一口に日本酒の「燗をつける」と言っても、その温め方や手法には様々なやり方や加減があります。同銘柄、同一の瓶からであっても、非常に異なった、あるいは、これが同じ酒なのかと思うほど、その結果としての香味を多彩に変化させてしまう、それも燗の微妙さなのです。
では、日本酒をお燗する方法にはいく通りあるでしょうか。
1つづつ挙げてゆき、そのメリット・デメリットを考察してみたいと思います。
−燗の技法 6通り−
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その1. 直火(じかび)燗
これは、鍋やヤカンに酒をたっぷりと張り、炭火やガスなどの熱源によって加熱する方法です。メリットとしては、極めて迅速に目的温度に達すること、ややワイルドな演出も可能なことです。
一方デメリットは、いくつかの大きな問題を含んでいることです。
まず、鍋やヤカンに接している部分の酒が過加熱(ヒ−ティグ)されるので、
加熱を始めて数十秒後には、底や側面から小さな気泡が立ってきます。実は、水は1気圧の時、100℃で沸騰しますが、アルコ−ルは78℃位とかなり低く、それ以下の温度でも、アルコ−ルは酒の中から離脱しようとします。この原理を意図的、産業的に利用した技術が蒸留です。
ところが、鍋やヤカンのお酒の中でこれが起こると、この微細な泡の一粒づつの中で、アルコ−ルが激しく揮発していることになります。
つまり、アルコ−ルの刺激が強い、相当に辛い酒に変わるのです。
もう一つは、酒の表面に近い鍋肌の所で、焦げや、激しい脱水がおこり、香りをゆがめる恐れがあります。ですから、直火燗は屋外、アウトドアで寒い時に一度に大量の酒を温める、そして大勢の人々がキュッと身体を熱くしたい時に向く方法だと言えます。
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その2. 湯煎燗
これは、最もポピュラ−な「燗をつける」技法ですが、これにも様々な段取りの違いがあり、仕上がったお酒も驚くほど違ってきます。
基本的には、大きめの鍋に水か湯を張り、火にかけ、酒を注ぎいれた徳利などをその中に浸ける、鍋、水、徳利の三重介在物の内で加熱することです。これにも条件があって、鍋の大きさ、水や湯の量、火力、徳利の材質や厚み、酒の
分量、浸ける本数、酒のもともとの温度などによって、仕上がりに要する時間や熱の伝わり方に違いが生じます。
その上に、大きく分類しても、- 水から沸かしてゆく
- ぐらぐらの熱湯につける
- その中間、約80℃手前位の湯温を維持しながらそこに浸ける
があります。さらに、入れたり出したりを意図的に行なうなどの細かな方法が派生してきます。
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| 次回ヘ続く |
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