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第1 |
に、当時の酒は現在より保存性を高めておく必要があって、今よりもエネルギッシュで重く、また酸味も強かったと考えられることから、お酒の甘・酸・苦・旨の各要素の味が、体温よりやや高い温度でスッキリとまとまり、燗上がりしたのではないでしょうか。 |
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第2 |
に、そのような酒は一方で貴重品だったこともあり、多分に良水で割って飲んでいたことも考えられます。実験してみますと、日本酒に水を加えてから燗をつけると加水したとは思えないほど味わいがまとまります。 つまり、加温することによって、酒の成分が瞬間的に熟成することが観察できるのです。 |
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第3 |
に、貝原益軒の「養生訓」に見られるような当時の自然思想や自然療法の考えに沿って、体温に近い暖かいもののほうが体に良いとされていたのでしょう。 |
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第4 |
に、当時の農業事情から見ると、今より気候が寒冷だったようで特に冬の過し方には格段の工夫が求められた、そんな一環だと考えられます。 また、住居の立て付けや材質から見ても、燗でなければやりきれなかったのではないでしょうか。
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第5 |
に、焼き物、陶工や窯場の増加と発展にともなって陶器の徳利や、盃、炭を用いた火鉢などが普及していったことも大きな関連があるでしょう。言わば、長火鉢で徳利の酒を燗することがトレンディ−な、粋でおしゃれな様式であったのではないでしょうか。 |
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第6 |
に、と言うよりも、最も大きな理由は、日本酒は燗をすると何といっても「おいしくなる」だけでなく、秋から冬にかけての味の濃い、油脂を含んだ食品や料理のおいしさを引き立てて、味をわかりやすくし、さらに暖かい酒による、口中をさっぱりと洗ってくれる効果を格別にたかめるのだと考えられます。 |
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